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No.769

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#舞台裏の欠片
「リビングデッドカルテ」1
サフランの過去話
共歴2016年11月14日。
人類を蝕むひとつの病が顕性化した。

数日前から各地で現れていた、かすかながら奇妙な痣。
目を覚ましたそれは、人の意識を奪い、黒く朽ちゆく体を操り、より多くの宿主を求めて彷徨い始めた。
日が沈むと同時にゾンビが陰から現れる。そんなホラー映画のような光景が、突如として現実のものとなったのだ。

外出規制、避難、保護、特定地域の封鎖――そして潜伏期間を経ての拡散。あらゆる対応が後手に回り、封鎖区域は広がる一方だった。
その要因は感染拡大の速さだけではない。
”自我を失くした人間は殺してもよいものか?”
唐突に突き付けられたその問いに対する人間の答えは、ついぞ一本の線引きに収束することはなかった。

取り残された一軒家で、金髪の少女はなおも笑顔だった。
一人と一匹の家族が側にいたからだ。

「おばあちゃん。もし何かあっても、あたしが絶対守るからね。シナモンも一緒だし、怖いもんなんてないし!」
食卓を囲み、彼女は自信満々にそう言った。
非常食だけの食事だが、温かいものを口にすれば、肌寒い部屋のことも忘れられた。
真っ白な犬も彼女を見上げ、自信ありげに尻尾を振る。
「そのうち避難の車両も来るはずだから、大丈夫だよ」

そう、大丈夫。
その言葉を、おまじないのように繰り返していた。

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