Blog

検索する

No.771

文字

#舞台裏の欠片
「リビングデッドカルテ」2
サフランの過去話
※採血描写あり
青黒く乾燥した皮膚に、細い針が浅く入ってゆく。
少女はぴくりとも動かず、自分の血液が注射器に入っていくのを見ていた。
――黒い。
いつだかの採血で見たあの赤黒い血の色など、比較にならない。
彼女はその不自然な液体から目を離せずにいた。
まるで、かつて人間であった自分とは違うのだ、と突き付けられるようだった。

彼女の友人でもある”主治医”は、手慣れた動作で針を抜き、穿刺部にガーゼを押し当てた。
「はい、腕はそのままね。これ、しばらく押さえててね」
穏やかな声とともに、穿刺部を自分で押さえるよう、自然に促される。

小さな黒い染みが、ガーゼに滲む。
「……止血、するんだ」
少女の口は無意識に言葉をこぼした。
医者は驚いた様子で、しかし一切の不快そうな素振りはなく答えた。
「当たり前でしょう」

彼はどこか上の空のような少女の様子を見て、普段のにこやかな態度で続けた。
「むしろ、その体じゃ傷が治りにくいんだから、少し長めに様子を見るよ。膝の傷みたいに痕が残るのも良くないからね」
「こんなん別に。……全身、傷痕どころじゃないし」
「ううん、大事なことだよ」
優しい声が、自嘲を遮る。

――思い返せば、昔からそうだった。
この声にたしなめられたら、もう少し自分を甘やかしても良いんじゃないかと、そう思わされる。

少女はひとつ軽く息を吐き、いつもの気楽な口調に戻って言った。
「メグせんせー。それせっかく採ったんだから、何か分かることあったら教えてね」
「勿論。大事に扱うよ」
医者は明るく微笑んだ。

畳む
検索・絞り込み

日付検索:

詳細全文検索:

  • 年月
  • #タグ
  • カテゴリ
  • 出力順序