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2025年10月13日(時系列順)[5件]
#銀嶺の獣

「あ! 何かいたよ!」
少女が川のほうへぐいっと身を乗り出す。
ニーナが指差す先では、水が穏やかに流れていた。朝日を受けた水面は、静かに音をたてながらちらちらと輝いている。小さな沢は、ここ数日の雪解け水でいつもより僅かに水流が速い。
ゼルデデは、ニーナが持った枝の片側を軽く引っ張って警告した。ついさっき少女に「こっち側を持ってて」とせがまれて持たされたものだった。
「こら。あまり、川縁に近づくんじゃない。……雪が滑って、落ちるぞ」
「大丈夫だよ! ほら、ニーナは枝のこっち側持ってるでしょ。こうやって、手を離さなきゃいいんだよ」
無邪気な少女はそう言って、枝の片側をつかんだまま、ぶらぶらと体重をかけるように川を覗き込む。
ゼルデデは枝と一緒に紐を握る手を強めた。
その細い紐はニーナの腰元につながっていた。それは、まだ幼く落ち着きのない彼女を森で見失わないよう、結びつけたものだ。使い始めてから数週間というところだったが、幸か不幸か、この紐は既に何度かその役目を果たしていた。
ゼルデデは、また今日も面倒事が起こるのかと、うんざりした気持ちになった。
「川縁は危ないんだ。前にも一度川に入って、ひどい風邪をひいただろう。あれと同じようになる……」
「ゼルデデほら! あそこにも! あれってお魚? 捕まえられないかなあ」
心配をよそに、ニーナは水の中の気配に夢中になっていた。川のほうへ重心を移動させるたび、小さな靴はぎゅむ、と微かな音を立てて雪に沈み込む。雪の下の岩が滑る想像は容易についた。
ゼルデデは仮面の下で眉をしかめ、低いため息を吐く。それから、脇でそわそわとしているオオカミに声をかけた。
「おいアル。お前も見ていないで、こいつを止めろ。俺は、また病人の面倒をみるのは、こりごりなんだ」
オオカミはその不機嫌そうな顔を一瞬見上げてから、真意を察する。
『ニーナ、ゼルデデが心配してるぜ』
湿った鼻でぐいと胸元を押され、ニーナは唇を尖らせた。「はーい」と煮え切らない返事をして、ゼルデデの足元まで後ずさる。
「ね、ゼルデデはあの魚とれる?」
ニーナを連れて数歩下がりながら、ゼルデデは仮面越しの川に目をやった。銀に光る水面の下で、小さな影が揺れているのが見える。
「捕れるが、ここのは小さすぎて、食えるようなものではない。わざわざ捕ろうとは、思わん」
そう不愛想に言った数拍の後、ゼルデデはまた口を開いた。
「……興味があるなら、後で釣具か罠でも作ってやろうか」
「釣り! やりたい! ね、早くお散歩終わらせて帰ろうよう」
少女は見上げた瞳を輝かせて、ぐいぐいと枝を引っ張る。
わがままな振る舞いに呆れながら、ゼルデデは白い息を吐いた。
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2026/2/1 ちょっと加筆修正

「あ! 何かいたよ!」
少女が川のほうへぐいっと身を乗り出す。
ニーナが指差す先では、水が穏やかに流れていた。朝日を受けた水面は、静かに音をたてながらちらちらと輝いている。小さな沢は、ここ数日の雪解け水でいつもより僅かに水流が速い。
ゼルデデは、ニーナが持った枝の片側を軽く引っ張って警告した。ついさっき少女に「こっち側を持ってて」とせがまれて持たされたものだった。
「こら。あまり、川縁に近づくんじゃない。……雪が滑って、落ちるぞ」
「大丈夫だよ! ほら、ニーナは枝のこっち側持ってるでしょ。こうやって、手を離さなきゃいいんだよ」
無邪気な少女はそう言って、枝の片側をつかんだまま、ぶらぶらと体重をかけるように川を覗き込む。
ゼルデデは枝と一緒に紐を握る手を強めた。
その細い紐はニーナの腰元につながっていた。それは、まだ幼く落ち着きのない彼女を森で見失わないよう、結びつけたものだ。使い始めてから数週間というところだったが、幸か不幸か、この紐は既に何度かその役目を果たしていた。
ゼルデデは、また今日も面倒事が起こるのかと、うんざりした気持ちになった。
「川縁は危ないんだ。前にも一度川に入って、ひどい風邪をひいただろう。あれと同じようになる……」
「ゼルデデほら! あそこにも! あれってお魚? 捕まえられないかなあ」
心配をよそに、ニーナは水の中の気配に夢中になっていた。川のほうへ重心を移動させるたび、小さな靴はぎゅむ、と微かな音を立てて雪に沈み込む。雪の下の岩が滑る想像は容易についた。
ゼルデデは仮面の下で眉をしかめ、低いため息を吐く。それから、脇でそわそわとしているオオカミに声をかけた。
「おいアル。お前も見ていないで、こいつを止めろ。俺は、また病人の面倒をみるのは、こりごりなんだ」
オオカミはその不機嫌そうな顔を一瞬見上げてから、真意を察する。
『ニーナ、ゼルデデが心配してるぜ』
湿った鼻でぐいと胸元を押され、ニーナは唇を尖らせた。「はーい」と煮え切らない返事をして、ゼルデデの足元まで後ずさる。
「ね、ゼルデデはあの魚とれる?」
ニーナを連れて数歩下がりながら、ゼルデデは仮面越しの川に目をやった。銀に光る水面の下で、小さな影が揺れているのが見える。
「捕れるが、ここのは小さすぎて、食えるようなものではない。わざわざ捕ろうとは、思わん」
そう不愛想に言った数拍の後、ゼルデデはまた口を開いた。
「……興味があるなら、後で釣具か罠でも作ってやろうか」
「釣り! やりたい! ね、早くお散歩終わらせて帰ろうよう」
少女は見上げた瞳を輝かせて、ぐいぐいと枝を引っ張る。
わがままな振る舞いに呆れながら、ゼルデデは白い息を吐いた。
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2026/2/1 ちょっと加筆修正
2025年10月13日(月)
〔331日前〕
創作の話
#銀嶺の獣 というのは、いつぞやのキャラデザチャレンジで生まれたキャラを気に入りすぎてできた創作タイトルです。
雪山に住む大男ゼルデデと、ひとりぼっちのオオカミのアルクトゥスと、謎の少女ニーナのお話。
全体の構想はあるけど、現時点では特に一本にまとめた物語として書きあげる予定はないです(他創作に書きたいものが多すぎるので……😭)。
たまに書きたいシーンだけ書くくらいが、制作のバランス的にもちょうど良さそう。
雰囲気としては空気感重視で重ためなイメージなので、普段あまり描かない絵が描けるのが新鮮で良い!
こういう自然物メインの背景、とりわけ雪の積もった森というモチーフを描くのが好きだなあ。
雪山に住む大男ゼルデデと、ひとりぼっちのオオカミのアルクトゥスと、謎の少女ニーナのお話。
全体の構想はあるけど、現時点では特に一本にまとめた物語として書きあげる予定はないです(他創作に書きたいものが多すぎるので……😭)。
たまに書きたいシーンだけ書くくらいが、制作のバランス的にもちょうど良さそう。
雰囲気としては空気感重視で重ためなイメージなので、普段あまり描かない絵が描けるのが新鮮で良い!
こういう自然物メインの背景、とりわけ雪の積もった森というモチーフを描くのが好きだなあ。
2025年10月13日(月)
〔331日前〕
日記,雑記やメモ
近況
リバース1999が良すぎる
メインストーリーを4章まで読み、ゲームを始めたきっかけである葛天さんとジェシカちゃんについて知るために「朔日手記」「レイクミドロの悪夢」を読んだ。
どっちもかなり好きなお話だった!!
特にジェシカとジェイミー、無限に見ていたいな……気だるげギャルと無邪気タウル女子の関係性、かわいい!!!!
(そこにぬっと現れてたらしこんでいくヴェルティも面白い。こんなの主人公じゃなきゃ許されないぞ)
1999は女子キャラの関係性が濃くて本当に見ていて幸せになる。ありがとうございます。
ジェシカちゃんのお勉強エピソードも全部かわいくて最高。
他キャラクターはボイジャー、ロガーヘッド、ポルターガイスト、バニーバニー、ズィマーあたりがツボです。
低レア多いけどストーリー回るくらいならけっこうみんな活躍できるので嬉しい。
(難しいバトルもたいてい葛天かジェシカ+ロガーの火力でどうにかなると思っている)
あとノーティカさんも我慢できずに引いたけど、かわいい以外何がなんだかさっぱりなので、早くメインストーリー追いつきたい。
洞察後の下半身部分が中空になっているデザインが天才的だなーと思っている。
#リバース1999
畳む
あはれ!名作くんを見ている。
ログ遡ったらちょうど一年前に見始めていたみたいだ。 >>467
ED曲の「名作ジャーニー」「さよならイエロー」を改めて聴いていて、
そこから本編を見返しはじめたという経緯。
YouTubeで公式が数話ずつまとめてくれているのが、作業中に流しやすくてとてもありがたい。
畳む
遊戯王(OCG)をやる。
元から知人にちらほら決闘者がいるので、アニメ視聴メインのライト勢としてたまーにデュエルすることがあった。
これまでは知人に組んでもらった推しデッキである先史遺産と、たまにバージェストマを使っていた。
……のだが、一回くらい自力で組んでみようと思って、インターネットの助けを借りながら第二の推しデッキである機皇帝を組んだ!!
自分で考えて組んだ推しのデッキが手元にあるのめちゃめちゃ嬉しい。
遊戯王という作品の素晴らしいところは、推しと同じグッズを入手できることだとつくづく思う。
対シンクロという性質的に決して汎用性の高いデッキではないんだけど、そもそも超ライト勢に付き合ってくれる友人としか遊ばないから勝率は気にしないし、
何より格好いいから全部どうでもよくなる……嬉しい……。
しかし永遠にスリーブが決まらない。
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博物館とか動物園にもちょこちょこ行っているのでログをまとめたいところ。
リバース1999が良すぎる
メインストーリーを4章まで読み、ゲームを始めたきっかけである葛天さんとジェシカちゃんについて知るために「朔日手記」「レイクミドロの悪夢」を読んだ。
どっちもかなり好きなお話だった!!
特にジェシカとジェイミー、無限に見ていたいな……気だるげギャルと無邪気タウル女子の関係性、かわいい!!!!
(そこにぬっと現れてたらしこんでいくヴェルティも面白い。こんなの主人公じゃなきゃ許されないぞ)
1999は女子キャラの関係性が濃くて本当に見ていて幸せになる。ありがとうございます。
ジェシカちゃんのお勉強エピソードも全部かわいくて最高。
他キャラクターはボイジャー、ロガーヘッド、ポルターガイスト、バニーバニー、ズィマーあたりがツボです。
低レア多いけどストーリー回るくらいならけっこうみんな活躍できるので嬉しい。
(難しいバトルもたいてい葛天かジェシカ+ロガーの火力でどうにかなると思っている)
あとノーティカさんも我慢できずに引いたけど、かわいい以外何がなんだかさっぱりなので、早くメインストーリー追いつきたい。
洞察後の下半身部分が中空になっているデザインが天才的だなーと思っている。
#リバース1999
畳む
あはれ!名作くんを見ている。
ログ遡ったらちょうど一年前に見始めていたみたいだ。 >>467
ED曲の「名作ジャーニー」「さよならイエロー」を改めて聴いていて、
そこから本編を見返しはじめたという経緯。
YouTubeで公式が数話ずつまとめてくれているのが、作業中に流しやすくてとてもありがたい。
畳む
遊戯王(OCG)をやる。
元から知人にちらほら決闘者がいるので、アニメ視聴メインのライト勢としてたまーにデュエルすることがあった。
これまでは知人に組んでもらった推しデッキである先史遺産と、たまにバージェストマを使っていた。
……のだが、一回くらい自力で組んでみようと思って、インターネットの助けを借りながら第二の推しデッキである機皇帝を組んだ!!
自分で考えて組んだ推しのデッキが手元にあるのめちゃめちゃ嬉しい。
遊戯王という作品の素晴らしいところは、推しと同じグッズを入手できることだとつくづく思う。
対シンクロという性質的に決して汎用性の高いデッキではないんだけど、そもそも超ライト勢に付き合ってくれる友人としか遊ばないから勝率は気にしないし、
何より格好いいから全部どうでもよくなる……嬉しい……。
しかし永遠にスリーブが決まらない。
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博物館とか動物園にもちょこちょこ行っているのでログをまとめたいところ。
#銀嶺の獣山の天気が変わるのは、突然だった。
散歩の間に吹雪に吹かれたゼルデデは、連れていた一人と一匹を軽々とかつぎ上げた。
「わっ」
と驚く小さな声には気にも留めず、少し歩いた場所に突然現れた洞窟に潜り込む。雪の中にぽっかりと開いた入り口は随分と狭く見えたが、彼は一切の躊躇を見せることなく、その中へ入っていった。
薄暗い闇の中に下ろされた二人は、冷たい雪の張り付いた顔を見合わせた。
ゼルデデはただ一言
「そこにいろ」
と呟き、奥へと歩いていった。
目の前には、外の雪のわずかな光も届かない闇が広がっている。オオカミのアルには、この洞窟がどれほど広いのかも見当がつかなかった。音の響き方と、並の人間より背の高いゼルデデが難なく歩けるところを見るに、洞窟の天井は随分と高さがあるようだった。
外の吹雪はひどくなる一方だった。しかし、その冷気を含む風は外をごうごうと通り過ぎるだけで、洞窟の内側へ吹き込んでくる風は、ほんの少しだけだった。ひゅうひゅうと、耳をつんざくような高い音が響く。
アルはニーナが冷えないように、その分厚い毛皮をぎゅっと近寄せた。
洞窟の奥で、ゼルデデは何かがたがたと音を立てている。状況がまだあまり理解できていない様子の少女は、呑気に質問を投げ掛けた。
「ねー、何してるの」
その高い声は、洞窟の中にわあんとこだました。絶えず反響している外の風音と重なって、耳の奥が揺らされる。
ゼルデデはただ一言
「準備」
とだけ返事をした。暗い中で何をしているのか、ニーナの視界にはほとんど映らない。
やがて彼は入口付近に戻ってきた。それから、どうにか吹雪の風が当たらないくらいの場所に座ると、手に持ってきた枝をがさがさと置いた。服から火打石を取り出し、手慣れた様子で布の切れ端に火を点ける。その火口の火は枯れ枝に燃え移り、やがて小さな焚き火となった。
ニーナとアルはぴったりくっついたまま、そこへ近付いた。
「あったかいねぇ」
少女は手をかざして、にこにこと微笑む。
火は辺りをぼんやりと照らし、洞窟の高い壁に大きな影を作った。それはまだ小さかったが、雪に凍えた彼らにとっては何よりも頼もしい暖かさだった。
ゼルデデは黙って、火の様子を見ながら淡々と枝を投げ込んでいく。枝はぱちぱちと音を立て、段々と火の勢いも強まってきた。
洞窟の壁に、三つの大きな影がゆらゆらと映る。
『よく燃やせるような枝があったな』
それは二人にだけ聞こえるアルの声だ。
ゼルデデは火から一切目を離さずに、ぼそぼそとした低い声で答える。
「この辺りはよく通るから、こういう時のために、時々物資を補給しているんだ。……奥に小さな縦穴もあるから、換気も心配ない……良い場所だ」
そこでオオカミは改めて周囲を見回した。少し明るく照らされた辺りを見れば、火を焚いた跡や掃除をした形跡が見えた。
『へえ、避難所ってとこか。こういう場所は他にもあるのか?』
「……何か所か、ある」
会話はそれきりだった。
暖かな炎に照らされた空間には、ごうごうと強まる風の音が、くぐもって響いていた。
焚き火が安定してくると、ゼルデデは雪で濡れた上着を脱いだ。上着の表面が乾くように焚き火のそばに広げ、いつの間にか外していた仮面をその上に静かに置く。
ゼルデデが焚き火に向かってどっしりと腰を下ろすと、アルとニーナはいそいそと移動し、彼を挟むようにぴったりと座り込んだ。
「ねえゼルデデ、お話して」
ニーナはそう言ってゼルデデを見上げる。目が合うと、少女の金と青の大きな瞳はぱちぱちと瞬きをした。大男は僅かに眉をしかめる。
「話、だと?」
「うん!」
「……話すことなど、ない」
考える素振りもなく、ゼルデデは首を横に振った。
その態度に、少女は頬を膨らませる。
「作り話でも、昔話でも、何でもいいんだよ。このままじゃ眠くなっちゃう! ねえ、アルもそうでしょ?」
『オレは別に……』
オオカミはそう言いかけて、目の前にいる少女のしかめっ面の意味を汲み取った。ここで少女の機嫌をとらないと、後々面倒なことになりそうだ。
『ゼルデデ、オレもお前の話が聞きたいな。お前はこの中で一番長生きだから、色んな話を知っているだろ』
男は眉をさらに曲げ、一人と一匹の顔を見やった。左右から投げられる視線は、純粋で期待に満ちている。
彼は眉間の皺に手を当てて、低く長いため息をゆっくりと吐きだした。
それからさらに少し間をおいて、彼は観念したように口を開いた。金色の目に、焚き火の明かりがちらつく。
「……俺が子どもの頃に聞いた話だ。昔、とある村に男が住んでいたという。彼はたいへんな正直者で――」
普段とは違う朗々とした語り口に、ニーナとアルは一瞬目を合わせた。
その驚きは、話に聞き入っていくとすぐにどこかへ行ってしまった。それはどこにでもあるような昔話だった。けれど、彼の紡ぐ言葉には、まるでその話を本当に見てきたかのような様子があった。
低い声で紡がれる語りが、洞窟内にこだまする。
うなる風音が、枯れ枝がはじける音と重なり、歌のように響いていた。
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2026/2/1 加筆修正