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2025年12月18日(木)
〔31日前〕
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すき!
#海底二万里
#FA
第二部1章あたりの時系列の話。捏造二次創作掌編です。
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悪夢を見た。
周囲を埋め尽くす銃声、悲鳴、怒号、倒れゆく人々。目の端に映る赤いものが火花か血か、もうよく分からない。遠くに見える軍人。人を人とも思わない残虐な行為がただただ繰り返されていた。何のためにこんなことが起こっているのだろうか。
その光景にわたしは跳ね起きた。息は浅く跳ね、ひどい汗をかいている。起こした体を支える腕は震えていた。しかしそれでも、わたしの脳はその景色を反芻することを止めようとはしない。
言いようのない気分の悪さが胸元にこみあげた。船酔い? まさか。
静かにベッドから出て、その縁へ腰かける。冷汗は額も首元もじっとりと濡らし、あれがただの悪夢ではないことを自覚させる。そう、あれは夢ではないのだ。水面に浮かび上がる泡のように、奥底からまっすぐ蘇ってくるそれは、紛れもなくわたしの記憶だ。
こんな景色を誰が見せている?
わたし自身か、復讐の名を冠した怪物なのか。それとも神よ、あなたなのか。
わたしは汗を拭き、軽く着替えて、その簡素な船長室を出た。
時間は早朝にあたる。船は静かな音を立て、水面下四十から五十メートルのところを西北西に向かっていた。ジャワの沖にそって進むその行き先は、セイロンである。
大広間にはひとりの学者がいた。標本の入ったケースに顔を近づけていて、わたしに気付いた様子はない。
わたしはさっきまでの悪夢の余韻を頭から振り払い、息をしずかに整え、彼の言語で話しかけた。
「ずいぶん早いですね、アロナックスさん?」
「船長」
その学者は、はっとわたしを見て、いつもの穏やかさで応えた。彼の手には畳まれた海図があった。海中を見ることのできる窓は閉めていたから、おおかたここが海洋のどこか調べたうえで、この辺りにいる魚種の標本を鑑賞していたのだろう。
彼にあの船員を診てもらってから――あのサンゴの墓地を見せてから、何日か経過していた。
アロナックス先生は、特に何も言おうとしなかった。それは、気になることがあるがそれを聞くのは今ではないと、わたしが口を開くのを待つような様子だ。彼はいつもそうだった。彼はわたしを学者の友としてみて、この海中旅行をあの助手と堪能する一方で、あの気の短い仲間のことを想っている。立派なものだ。しかし、わたしが彼の心配事をわざわざ気に留める義務はない。
それでも、今のわたしは彼に礼をする筋合いがあった。
「先生、先日はどうも」
「先日というと、亡くなった彼のことでしょうか」
わたしは静かに頷いた。先生は神妙に目を伏せて
「お気の毒に」
といった。
彼は、あの船員の怪我の理由を聞くことはもうしなかった。わたしが答えないことを、分かっているらしかった。
彼の認識はその通りで、わたしは、わたしの目的を彼に明らかにするつもりは一切なかった。それは無意味なことだからだ。彼は海洋生物学者として素晴らしい人物だが、その事実はわたしの信念の僅かすら変える理由になり得ない。わたしと、ノーチラス号の船員である仲間の間にどれだけの絆があるかもまた、彼が知る必要はなかった。
わたしは彼の隣に立って、黙ってその視線の先にある標本に目をやった。
「ネモ船長」
と彼は口を開いた。
「この世界で最も大きなサメはウバザメですね。シャルル・ルシュールがゾウのようなサメとして記載をしていました。ここにはあらゆる魚種の標本がありますが、それほど大きなものは、さすがのあなたでも流石に難しいのでしょう」
わたしは彼の言葉を受け止め、それから微笑んで答えた。
「いいえ、先生。剥製こそありませんが、もっと大きなサメがいますよ。それもこのインド洋にね」
「なんですって!」
彼は声をあげ、信じられないといった風にこちらを見た。わたしは、本当ですよ、と頷いてみせる。
「ヒゲクジラのように食事をする、まだら模様のサメがいるのです。見た目はクジラによく似ていますが、尾びれが縦になっているのでサメの仲間だと分かるのです。クジラザメと呼んでも差し支えないでしょう。彼らは水温の高い海域にしかいませんから、きっと陸地の研究者がその生きているのを見るのは、ずっと後になるでしょうね。でも私は確かに見たことがあるのですよ」
わたしは過去に何度も訪れたこの海で見た、その生き物のことを思い出しながら、そう説明した。ブルーサファイアのように明るく美しい赤道近くの海を泳ぎ、大勢のコバンザメを引き連れて泳ぐ、雄大で灰色の、善良なるかの生き物。あの姿を初めて目にした時のことは忘れまい。
「そう、血を流さないサメが、この海には存在しているのですよ……」
陸地に足をとらわれただ血を流す愚かな存在とは違う生き方が、海にはある。わたしは彼らが知らない海を知っているのだ。わたしはもう、彼らとは違う。最期のその時までこの海にいることを誓ったのだ。
わたしはこれまでにサンゴの墓に眠りについた船員たちのことを思い浮かべながら、標本のケースに手を添えて、じっと静かに目を瞑る。
学者の視線が静かに向けられているのを、わたしは黙って感じていた。
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補足情報
・ネモの出身地はあえて出していない
・1820年代以降にウバザメが記載されている
・1868年ごろにジンベイザメが記載されている(原作は1866~68の話)
あと、あくまでネモの人間っぽさ・傲慢さや、海底二万里にみられる当時の動物観も含めて好きなのでそのへんを考慮しています。
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悪夢を見た。
周囲を埋め尽くす銃声、悲鳴、怒号、倒れゆく人々。目の端に映る赤いものが火花か血か、もうよく分からない。遠くに見える軍人。人を人とも思わない残虐な行為がただただ繰り返されていた。何のためにこんなことが起こっているのだろうか。
その光景にわたしは跳ね起きた。息は浅く跳ね、ひどい汗をかいている。起こした体を支える腕は震えていた。しかしそれでも、わたしの脳はその景色を反芻することを止めようとはしない。
言いようのない気分の悪さが胸元にこみあげた。船酔い? まさか。
静かにベッドから出て、その縁へ腰かける。冷汗は額も首元もじっとりと濡らし、あれがただの悪夢ではないことを自覚させる。そう、あれは夢ではないのだ。水面に浮かび上がる泡のように、奥底からまっすぐ蘇ってくるそれは、紛れもなくわたしの記憶だ。
こんな景色を誰が見せている?
わたし自身か、復讐の名を冠した怪物なのか。それとも神よ、あなたなのか。
わたしは汗を拭き、軽く着替えて、その簡素な船長室を出た。
時間は早朝にあたる。船は静かな音を立て、水面下四十から五十メートルのところを西北西に向かっていた。ジャワの沖にそって進むその行き先は、セイロンである。
大広間にはひとりの学者がいた。標本の入ったケースに顔を近づけていて、わたしに気付いた様子はない。
わたしはさっきまでの悪夢の余韻を頭から振り払い、息をしずかに整え、彼の言語で話しかけた。
「ずいぶん早いですね、アロナックスさん?」
「船長」
その学者は、はっとわたしを見て、いつもの穏やかさで応えた。彼の手には畳まれた海図があった。海中を見ることのできる窓は閉めていたから、おおかたここが海洋のどこか調べたうえで、この辺りにいる魚種の標本を鑑賞していたのだろう。
彼にあの船員を診てもらってから――あのサンゴの墓地を見せてから、何日か経過していた。
アロナックス先生は、特に何も言おうとしなかった。それは、気になることがあるがそれを聞くのは今ではないと、わたしが口を開くのを待つような様子だ。彼はいつもそうだった。彼はわたしを学者の友としてみて、この海中旅行をあの助手と堪能する一方で、あの気の短い仲間のことを想っている。立派なものだ。しかし、わたしが彼の心配事をわざわざ気に留める義務はない。
それでも、今のわたしは彼に礼をする筋合いがあった。
「先生、先日はどうも」
「先日というと、亡くなった彼のことでしょうか」
わたしは静かに頷いた。先生は神妙に目を伏せて
「お気の毒に」
といった。
彼は、あの船員の怪我の理由を聞くことはもうしなかった。わたしが答えないことを、分かっているらしかった。
彼の認識はその通りで、わたしは、わたしの目的を彼に明らかにするつもりは一切なかった。それは無意味なことだからだ。彼は海洋生物学者として素晴らしい人物だが、その事実はわたしの信念の僅かすら変える理由になり得ない。わたしと、ノーチラス号の船員である仲間の間にどれだけの絆があるかもまた、彼が知る必要はなかった。
わたしは彼の隣に立って、黙ってその視線の先にある標本に目をやった。
「ネモ船長」
と彼は口を開いた。
「この世界で最も大きなサメはウバザメですね。シャルル・ルシュールがゾウのようなサメとして記載をしていました。ここにはあらゆる魚種の標本がありますが、それほど大きなものは、さすがのあなたでも流石に難しいのでしょう」
わたしは彼の言葉を受け止め、それから微笑んで答えた。
「いいえ、先生。剥製こそありませんが、もっと大きなサメがいますよ。それもこのインド洋にね」
「なんですって!」
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「ヒゲクジラのように食事をする、まだら模様のサメがいるのです。見た目はクジラによく似ていますが、尾びれが縦になっているのでサメの仲間だと分かるのです。クジラザメと呼んでも差し支えないでしょう。彼らは水温の高い海域にしかいませんから、きっと陸地の研究者がその生きているのを見るのは、ずっと後になるでしょうね。でも私は確かに見たことがあるのですよ」
わたしは過去に何度も訪れたこの海で見た、その生き物のことを思い出しながら、そう説明した。ブルーサファイアのように明るく美しい赤道近くの海を泳ぎ、大勢のコバンザメを引き連れて泳ぐ、雄大で灰色の、善良なるかの生き物。あの姿を初めて目にした時のことは忘れまい。
「そう、血を流さないサメが、この海には存在しているのですよ……」
陸地に足をとらわれただ血を流す愚かな存在とは違う生き方が、海にはある。わたしは彼らが知らない海を知っているのだ。わたしはもう、彼らとは違う。最期のその時までこの海にいることを誓ったのだ。
わたしはこれまでにサンゴの墓に眠りについた船員たちのことを思い浮かべながら、標本のケースに手を添えて、じっと静かに目を瞑る。
学者の視線が静かに向けられているのを、わたしは黙って感じていた。
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・1868年ごろにジンベイザメが記載されている(原作は1866~68の話)
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