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カテゴリ「作品感想105件]

作品感想,映画

『アバター』観た。完全初見。
タイトルとあの青い種族の見た目だけ知ってたというレベル。
よく見たら人外さんたちのキャラデザめっちゃ素敵じゃん……!? となったのと、SF熱がきているのでこのタイミングに観た。

随所に刺さるポイントがあって、かなり好きな映画でびっくりしている……!! 観てよかった~~!!
デカい人外ってやはり最高だ。
まずナヴィ(あの青い種族)なんだけど、その、身長2~3メートルあるんですね……。ありがとうございます。これだけでもう嬉しくて仕方がない。五体投地。
最初にアバターが登場した時点で性癖に刺さる音がしてだめだった。異種族の造形として良すぎる……っ。

舞台が異星なのにはびっくりした。勝手に未来の地球の話だと思っていたので。
足を失った男が代わりの人外の体を得、異種族との交流を図る……というイントロの時点でめちゃめちゃおもしろい!! ド好みです!!


作中のナヴィの描写は完全な異種族としてよりも、"未開の人々"の記号として表現されていた。
独自の言語や暮らしを持ち、彼らなりの死生観と世界観のなかで生きている人々。
そういう意味ではストーリーラインもとても分かりやすかった。帝国主義への問いかけであり、合理的自然保護の話でもある。

パーカーが途中でナヴィのことを「青猿」"blue monkey"と呼んだのも、大佐が彼らを見下すのも、とても露骨な表現だ。
でももし当事者として自分の知っている世界とは違う文化圏に投げ入れられた時、果たして人間はジェイクのように"彼らは未開の人々だ"という視線をああして手放せるのだろうか、と考え込む。
郷に入っては郷に従い、他文化が大事にしているものを自分も大事にする。シンプルだからこそ、そこに自分の驕りや思い込みはないだろうか……自覚してないだけで……と思う。上手い言葉でまとめられないんだけど……。
他種族を対等に見る理由は相手の賢さなのか? 肌の色か? 見た目の人間っぽさか? 強さか?
そういう意味で"人類"中心主義の話だ……とぐるぐる考える。

終盤で主人公の退役軍人設定が活きるのには納得感あってよかったけど、同時にずっと「人類は愚か……戦争は愚か……」という気持ちでいっぱいだった。
ジェイクの最後の選択も、結局人類は醜かったという結末で終わるし橋渡し役はいなくなるのか……という無念さがあり、客観的な結末としては寂しかった。あれだけ話を聞かない人間に囲まれたジェイクの選択としては当然だけど。
トルーディはめちゃめちゃかっこよかった。

ナヴィの文化に関しては、狩り・葬送・婚姻など色んな面から描写されててディティールも良い。言語もあれ多分ちゃんと作り込んであるやつだよな……?
人外種族の文化って大好きなのでいっぱい見たい。
食事シーンがなかったのだけ惜しいな……!


あと映像美!! もうぜ~~んぶすごい!!!!
ナヴィたちはCGだと思えないくらい自然だし、背景の自然も壮大で美しい。
森の景色は地球の熱帯林のような緑に青が映えて幻想的で、生き物のデザインも世界観的な統一感がありつつ個性的でとても素敵だ。夜の光の表現もとっても綺麗!
パンドラ(星)が完全な異世界ではなく地球っぽい環境をベースにしているので、違和感が大きすぎず差異が際立つ絶妙なバランスだなあと思う。
磁場の形をした岩も、現実にも柱状節理みたいなすごい岩あるもんな……異星にあってもおかしくないな……と納得できてしまう。

生物種も、動物植物のどっちもデザインが面白くてわくわくする!
プロレムリスって出てきた瞬間「つまりキツネザルってことですか!?」と立ち上がってしまった。
六足ウマの頭骨はオオアリクイみたいでかわいいし、イクランやトルークはミクロラプトルみたいな飛行シルエットが素敵。
このへんの生物素敵すぎるので設定資料集とかあったら欲しいなあ。あるだろうけど入手難しそうだなあ。
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作品感想,映画

『海底二万マイル』を観た。1954年のディズニー版実写のやつ。
原作ありの映画としてなかなか良かった!

ディズニーシーの海底二万マイルのエリアを見てなんとなく知ってはいたけど、やはりビジュアル面の良さがぶっちぎっている……!(※ディズニーシーに行ったことはない)
※原作通過済み、「神秘の島」は読み途中の段階

原作側から見て忠実な作品かといわれれば微妙なのだが、当時のエンタメ作品としてはかなり原作の要素を拾って構成していてすごい、という印象。
主人公側3人の描写がいまいち好きになれなかったんだけど、ネモの思想の強さや船内の雰囲気や細部の造形はとても良かったし、一部のアニメ撮影的な表現も流石ディズニーだな~と思った!

序盤のフリゲート艦上の表現はあまりリアルって感じではなくて、合成感が強いし海風の感じもあまり感じられない。
なのでノーチラス号の描写のほうにリソースを割いたのかなって思ったんだけど、その通りだった!
原作の挿絵の雰囲気を出しつつ、あの"ノーチラス号といえば"な造形……ビス打ちされた茶色い鉄板やパイプがひしめく壁と、重厚でクラシックな家具、眩い電気の光、突き刺す気満々な外装、ぜ~んぶ格好いい!!
雰囲気が近いジャンルとしてはスチームパンクがあるけど、スチームじゃなくて電気だし、もうちょっとSF感と重厚さとクラシカルが混ざった絶妙なイメージがあるんだよなあ。あの感じ素敵だ。
扇形の二枚貝のようなオルガンのデザインもめちゃめちゃ良い!

ネモも良かった。
自分のイメージしてた原作ネモとは違うんだけど、この強い感情を秘めた目力の感じもまた良い。
よく喋るしよく感情をあらわにするけど、たぶんこの映画の展開の早さのせいもあるなという感じ。
葬式のシーンを序盤に持ってくるのも、彼の不可解さを表すのにとても良かった(昇降口開けてたのはうっかりさんすぎるが)。
復讐者としてのネモが感情を抑えられない描写も、映画だからオルガンの音による演出が際立っていて印象的……!
全体的に、海に魅せられた側面よりも、陸の人間を憎む描写が強めだった。生態系の話とか全然してなかったから仕方ないんだけど。

でもネモが軽率に上陸するのは解釈違いです。上陸するにしてもその感じは違うだろう!?
そして現在進行形で神秘の島読んでる途中(ネモ未登場)だから、ネモの独白のシーンに「これってネタバレ!? それともディズニー版特有の設定!? どっち!? どっちですかー!!??」って混乱しきりだった。早く続き読もう……。
もしあの独白が本当だとしたら、世界中がノーチラス号を怪物だと思っている中でイギリスだけはネモの正体に気付いていたってことになるのか……?
そしてディズニーシーの設定は、映画ネモではあるけど全くの別世界線という感じになるのかな。それはそれで気になるし行ってみたいなあ。

主人公側3人の仲があまり良くなかったのは見ててちょっと寂しかったな。
そもそもコンセイユが原作のイメージと乖離していて、登場時点から戸惑っていた。本当にこの人誰……!? あの先生に忠実で分類オタクの健気な若者コンセイユはどこへ!?
ネッドランドのほうは登場時点でひと目で分かったけど、熱意というより軽率さが目立つ。
アロナックス先生も楽観的で口が軽くてネモに影響されやすくて……この3人なら仲間割れするよなって感じで……原作がめちゃめちゃ仲良く見えてくる……。

原作との根本的な違いとしては、「ノーチラス号の動力源が電気である」ことを明言していないというのがある。
これは多分映画公開時点では電気が普及しすぎていたので、ネモの前人未踏の科学力を示すために「現在ではまだ追いつけない技術」というふんわりした表現になったんだろうな~と思っている。

島の先住民たちに襲われるくだりや巨大頭足類との戦いは、やっぱり映画との相性がいいなと思った。
序盤に、海の怪物(ノーチラス号)はずっと南太平洋にいると明言されてて「世界中回らないの?」って気になったけど、この設定のおかげで世界一周がなくとも違和感がない作りになっているんだなあと後から納得した。

そして撃たれた後のネモがノーチラス号と船員とともに海底で死のうとするところは、解釈としてまあ分かる。
ここまで来ている時点で船員たちはネモに命を預けているだろうし、ネモがいない中でノーチラス号を運用していくのか? 誰かが彼の復讐を継ぐのか? という問題もあるし。
ただ、このネモは結局自分の発明を残したいのか残したくないのかわからなかった。残したいならアロナックスたち逃がしてから沈むんじゃない!? なんで世界の未来に希望託しながら全部沈もうとしてたんだ。

一通り観てから映画ポスター見たら、何でそこにネッドがいるんだよって爆笑しちゃった。先生1mmも映ってないじゃん!!
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#海底二万里

作品感想,映画

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』観た。
友人氏のおすすめにより、香港映画を初めて観る。
め~っちゃ良かった!
感想(※オモコロとリバースの話がある)
お、おもしれ~~~っ
画面もアクションもかっこいいしキャラも人間関係もすっごく魅力的。
冒頭を含めて度々「ウワッ痛そっ」となるシーンはあれど、後述する理由で自分は見れないほどではなかった。面白さが余裕で上回る!!

背景の町の雰囲気がとにかく良くて、世界観にめちゃめちゃ惹きこまれる!
ネオンがギラギラバチバチでいかにも香港って感じの街も、建物も人もギチギチでごちゃごちゃな九龍城砦も、どちらも異文化の魅力を感じる。

痛そうなシーンはそれなりにあるんだけど、アクションシーンのテンポが速いしサクサク戦闘が進むので「うおーっいけーっ」というテンションに紛れてしまう。
人間の動きやパワーが常人のそれではなくて、これアニメでやるアクションじゃない!? 実写でここまでの迫力で表現できるんだ!? とびっくり。
あとモブ含め人間の体が硬いのも面白い。人間が壁にぶつかると壊れるのは壁のほうというレベルなので、まあ大丈夫かという気持ちになってくる(大丈夫ではない)。

そして敵も味方も強い! 兄貴たちが強くてかっこいい!!
なかでも約一名が規格外に強くてウケた。
というのも事前に「オモコロの加藤さんみたいな人がいる」と聞いており、登場時点で(この人めちゃめちゃオモコロの加藤さんみたいだな……いや尚早か……? でもかなりそうだよな……)と思ってたらそうだったんだけど、この人がチートキャラみたいな性能でめちゃめちゃ面白い。強すぎるのって面白いんだ。
世界観も雰囲気もニエゴ様(この記事のキャラ)で、実際本当にただ者じゃなかったので違和感は消えた。ヒャハハ笑いもすっごく似合う。
あとロン兄貴の登場シーンも強い。何度反芻してもかっこよすぎる……。

痛そうなシーンより、子どもが関わるエピソードがしんどかった。
どうか子どもは健全な環境ですこやかに育て!!!!(泣)という気持ちになるけど、現在進行形でいろいろな難民問題があって、その渦中の子どももいるわけで……といろいろ考えてしまった。
凧はモチーフとして美しくて印象的だったなあ。

曲も良かった~!
途中で入る現地の曲、なんか耳馴染みあるなと思ったらリバースのお願いオフィサーに音の感じが似てるんだな~と気付く。記憶の思わぬ繋がり。
あの曲調の感じはノワールさんが香港出身だからか……! と納得した。

あとエンディングで思ったのが、人々の日常が映るのがすごく良いなということ。
物語の舞台は裏社会で戦いも派手で、テーマ的には我々にとっての非日常という感じだけど、同じ空間で暮らす人々の日常や生活もまたそこにある、という空気感を作中で勿体ぶらずに描いているのを感じる。
そのディテールがあるからこそ、主人公たちがこの場所に抱いているかけがえのない思いがより染みるんだなあと思った。
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作品感想,映画

インディ・ジョーンズシリーズ『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』観た。

ちょっと前に、インディ・ジョーンズの曲は飽きるほど聞いたことがあるのに本編一度も観たことないじゃん!? と気づいた。なんかおじさんが冒険するやつっぽいなーというレベルの解像度。
知人に概要を聞いたら、古代遺跡・考古学者・博物学と好きな要素揃い踏みだったのでこの機会に見ることに。

めちゃ人気な理由が分かると同時に、自分のツボの横を綺麗にすり抜けて行ったのでびっくりした。
正直、別に特別好きでも嫌いでもなかったなという所感。
要素は好きだったんだけど、映画として個人的に刺さるものはあまりなかったというか。
でも人気な理由はめちゃめちゃ分かる!
これ多分、他人とわちゃわちゃ話しながら見るほうが良い映画なんだな。

自分が人文学を通ってるからだろうけど、遺跡からアイテム見つけたぜヤッター! というテンションに乗りきることができなかった。
作中で「この考古学のための調査は強奪とは違う」的なことを説明してたシーンがあったけど、後半の流れ見たらおいおい言ってること違うじゃんか~!☝️ってなっちゃった。強奪です。
大衆向けの面白さに考古学というモチーフを使ったらまあこうなるわな~という展開だらけで、そればかり考えてしまった。

あと、この作品が考古学というものの世間の印象を良くも悪くも形作ったんだなあと思った。
それにしても石箱のフタ乱雑に投げ捨てたり、壁を壊すとか言ってるとこでは「嘘だろ!?」って声出ちゃったが。
なんというか、自分の好きな方向性の「遺跡のロマン」と違うものがお出しされたので消化不良。

いやもちろん作中当時と今の考え方が違うのはある!! 分かってる!!

微妙だった理由の大きな要因としては多分、制作1981年・作中舞台1936年という時代背景もあるんだよな。
普段は「この時代ならこういう描写になるか~面白いな~」みたいな視点を脇に置きながら見ているんだけど、いかんせん今回はどちらの年代も最近過ぎず昔過ぎずで、現代の感覚との地続き感が中途半端に感じられたのが良くない気がする。この時代にこれを面白がっていいのか? という。
価値観は昔の話なのに、エンタメとしての魅せ方が現代的だから、ポストコロニアル的な感覚との齟齬がノイズになった感じ。

ここまで書きながら自分に対して「ごちゃごちゃうるせぇ~! そういう視点でみる映画じゃないだろ!」と思っている。
個人の感想だから別にいいじゃんとは思うけど、人気作品をストレートに面白がれないのってちょっと悔しい……。
それはそうと物語としての面白さは分かるし、テンポも良いし、それを表現するための演出も良いし、インディもかっこいいんだよな。
キャラクターそれぞれの個性も良かった!

箇条書きの感想
・罠だらけの遺跡を進むのかっこいい。この既視感の正体、遊戯王の双六じいちゃんだ!
 追ってくる岩、下がる天井、床のトラップetc.も古典的な表現だなと思ったんだけど、もしかしてこれが原典か!?
・武器が鞭なのってかっこいい
・当時の世界史とキリスト教知識が要求されている……っ! 説明のくだり、かなり雰囲気で聞いていた。
・外国人の顔つきの見分けがつかなくて、ちょっと服装とかが変わると分からなくなりがち。インディ、眼鏡かけると雰囲気変わるなあ。
・フサオマキザルだ~カワイ~南米のサルだから主要人物のペットっぽいね~と思ってたら死んだので悲しい。アメデオみたいに冒険に着いてくる癒し枠だと思ったのに……。そして飼い主の眼帯男、最後までよく分からなかった。
・人死にと爆発が軽すぎる!! すごいテンポでモブが死ぬ!!
・例の曲はめちゃめちゃ良い。BGMに流れると、流石インディだぜ!って気持ちにさせてくれる。
・マリオン、最初は強い女造形かと思ったけどどちらかというと魔性のほうだ。一応(酒に)強い女でもある。
・べロックの口に虫入ったように見えるシーン(多分ギリギリ入ってない)気になりすぎてしばらく会話が頭に入ってこなかった。面白くて。
・べロック、しょうもないライバルキャラとしてかなり良いキャラだったので死んだのめちゃめちゃびっくりした。インディに「俺はお前の影😉」みたいなこと言ってたし、てっきりシリーズ通してのライバル枠的存在かと思って観てた……違うのか……。

正直、遺跡とかオーパーツはモチーフとして本当に好きだから続編も観たいんだよな~~!!
作品によって雰囲気やテンションが違うこともままあるし、今回ので自分の視点の癖もわかったので、前提の姿勢を変えて観たい。
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作品感想,映画

1月14日に『FALL 落下の王国』を劇場で観た。

元は2006年の映画だけどDVDが廃盤になってたりで、知る人ぞ知る的な作品だったらしい……んだけど、それがリマスター版になって劇場公開!
というのをXで見かけて、PVの雰囲気とキャラデザの美しさに圧倒されて観に行った。

すっっっっっごく良かった。めちゃめちゃ好き。
視覚的な気持ち良さがずっと満たされる感じがあるし、物語としてもたいへん良かった。
怪我をしたスタントマンの男性が、同じく入院中の少女に物語を語って聞かせるという構造。
なので病院の描写と架空のお話の描写を行ったり来たりするんだけど、お話のパートの描写が本当に全部美しい。

自分は小説を読んだり物語を聞いている時に、脳内で映像を作って、もし自分の想像が描写とズレてたら随時修正して補完して……場合によっては背景を曖昧なままにして想像を続けて……っていう風に進めていくんだけど、それが映画で行われていた。
自分でも書いててどういうこと? って思うんだけど……。
主人公がアドリブで語り進める物語にあわせて、舞台がさまざまに移り変わりながら旅が進んでいく。
その全部が壮大で美しくて、いちばん綺麗な時の夢のようだった。
ちょこちょこ不可解なところや整合性の分からない箇所もあるんだけど、それもまた子どもに聞かせるアドリブの物語って感じで良い……。

特に、アレキサンダー大王が立っている場所が建物から砂漠に移るところと、布を血で染めるところ、霊者の儀式前後、青い街、ルイジの爆発のシーンあたりは本当に好き。
あと本当にキャラデザが良い……!!
移り変わる絵画のような美麗な構図にとにかく映える。みんなめちゃめちゃかっこいい。

スタントマンのロイは、自分が薬物乱用するために子どもを利用するのは勿論悪なんだけど、その手段が架空の物語だというのが狡くて優しいなと思う。
最後にロイが仮面の男を"助ける"ところは、物語的な美しさだけでなく、自分の物語の手を引くことの意味みたいなものを考えた。
物語を通して語ることの意味、それを子どもに語り聞かせることで生じるもの、そういうのが感じられてよかったなあ。

ふたりの人生の中で起きた物語としても、4人の男の美しい復讐物語としても、本当に好きな映画だった。
自分は「分からなさが好き」「そこにあるものが美しいという事実に意味を与えないことが好き」なところがあるんだけど、描写がそこにドンピシャだった感じがある。
観て本当によかった……。
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作品感想,映画

『白鯨との闘い』観た。
DVDレンタルする機会があったんだけど、そういえばちゃんと見てないな……と思い出したので。
だいぶ前にテレビでやってた時に後半だけ見たので、概要※は知ってる状態。

※メルヴィルの『白鯨』ではなく、メルヴィルが白鯨を書くために聞いた話がメインだということ。
厳密には、史実のエセックス号を元にした『エセックス号の悲劇』(2000)が原作らしい。

白鯨の関連作品ではあるけど、それよりもやはりエセックス号の人々の物語としてドキドキしながら観た。
海の迫力(視覚的にも物語的にも)も、これでもかと描かれていて良かった。
全体として、白鯨やその自然的驚異・畏怖よりも、人間同士の話だなと思った。
捕鯨船というものに関わる人と、それぞれの立ち位置から譲れぬもの、それらがぶつかった結果起こった状況を、一頭の白鯨がめちゃめちゃに悪化させていく話。

エセックス号でのシーンだけじゃなく、船が沈んでからの描写にもだいぶウェイトを置いている。
厳しい環境でどうするかという選択が本当に容赦ない。
エセックス号が史実の話というのはなんとなく知っていたけど、島への居残りやくじ引きも実際にあったことだと知って面食らった……。

メルヴィルの描いた"白鯨"(鯨同士の区別のためにこう表記する)と違うと感じたポイントとして、この白鯨は単なる野生動物としては表現されていないように思える、というのがある。
個人的に"白鯨"は各地で鯨捕りの前に姿を現してはゆうゆうと生き続ける、余裕をもった上位存在的なイメージがある。
こちらの白鯨はより執念深い。執拗に追いかけてくる行動は人間……というか主人公たちに嘲笑の意図をもっているように感じられる。
人間の愚かさを嘲笑う、ほんとうの悪魔みたいだ。それが逆に人間的だなと思う。
ボートの襲い方も、追突もしくは尾のビンタなので、食べるという目的もなさそうだし。

あと見た目の話! この白鯨は白というより、白黒のまだらが全身に広がっている感じなのがめちゃめちゃかっこいい!
作中で「大理石のような」と言われていたけど、本当にこの表現が合う……。
白変種やアルビノではなく、長く生き続けた中で受けた、数多の傷跡って感じ。

勿論メルヴィルの『白鯨』とは色々と違って、これはこれで作品として好きだな~と思うところがいっぱいあるんだけど、エセックス号からチェイス航海士が白鯨に銛を打ち込もうとするくだりは『白鯨』みを感じて嬉しくなった。
白い悪魔のようなクジラを前にした銛打ちが「奴を狩らねば」という欲に冒されていてもたってもいられなくなるの、たいへんアイコニックな白鯨表現で良い……!!

キャラクターとして好きだったのはチェイス(一等航海士)とマシュー(二等航海士)。
マシュー、最初のほうからずっと良い人だった……。


ここからは箇条書きの感想
・服飾や背景の作り込みが見てて楽しい。これ系の港町の雰囲気めっちゃ好きだ。
・船はそんなに大きくないんだな(後から調べたら元のエセックス号も捕鯨船のなかでは小さめだった)
・経験が浅いトップ(船長)と中間管理職(航海士)のギスギス、嫌ですねえ……。船長の従弟の立ち位置もなんか不穏。
・嵐のシーンの迫力が凄い! カメラワークでドキドキする。人間の無力さや、海というフィールドにおける船のちっぽけさを感じさせられる。
・捕鯨の迫力も良い~! ボートのスピード感、クジラの力強さ、銛打ちの技術……!
・血の潮の表現は「煙突が燃えたぞ」だ。
・解体のシーン、しっかりディティール映すんだなあ。すごい。臭そう(リアリティがあるという意味)。
・ボートに移ってからの船長の変わりようよ。
・「船乗りは貴重なものを無駄にしない」の重みったらない。でもそれを決められるのがチェイスという男なんだ……。二カーソン(語り手)のトラウマ描写につらくなる。
・石油の話で〆るのいいな。捕鯨がいらなくなることへの示唆だ。
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作品感想,本・漫画

#海底二万里 の感想。
読んだのが集英社版なので、文中で触れている箇所はすべてこれに準じています。
ジュール・ヴェルヌ著, 江口清訳. 集英社文庫『海底二万里』改訂新版 2009
初見感想
読んでいる最中に時々メモしていた内容を整えたものなので、およそ時系列順。内容バレあり。

■序盤
主人公って学者、しかもパリ自然史博物館の人だったんだ。すごい。
コンセイユは「100点満点の忠実な部下」すぎて面白い。
学者である主人公の助手という、時には影が薄くなりがちな立ち位置なのに、忠実さが尖っていてめちゃめちゃキャラが立っている。

ネッドランドは銛打ちキャラとして学者二人としっかり違うポジションで良い!
主人公らと出自が異なり、血気盛んで感情的、銛の腕はプロ、生命力に溢れて力強い、野性的であると同時に誠実で倫理的……というキャラは白鯨のクィークェグを思い起こさせる。これは「高貴な野蛮人」概念的だし、当時の記号的な造形なのかもしれない?
しかしネッド特有の良さとしては、アロナックス・コンセイユ・ネモという知識を追い求めることに夢中になりがちな人たちの中で、唯一まともな感覚を思い出させてくれるところだ。
この作品良いキャラばかりなんだけど、彼が唯一読者に近い常識的感覚をキープしてくれるので安心感がある……。

■8章
ネモとアロナックス一行の初対面。
ネモ船長系のキャラとしていちばん最初に思い浮かぶのがナディアのネモなんだけど、原作の外見描写はそういった想像とまるっきり違ってびびる。
色白で細く、ひややかで細く黒い目、それでいて芯があるのがひと目で分かる人物。意外すぎる……。
そしてこの時点で既に好みに突き刺さる気配がしてきている。

■10章
ネモはあらゆる語学が堪能で、最初からアロナックスたちが何を喋っているか全部分かっていた。今は彼らに合わせてあえてフランス語で喋ってくれている
↑!!??!?!
知識と教養を持つ者の余裕……ってこと……!? 完全にここでメロってしまった……やば……。
「流暢できれいな言葉遣いだが、アロナックスたちからすればネイティブではないことが察せられる」というラインも、彼の能力の高さとともに、あくまで手段としての言語を選択しているという合理性を感じる。
それにこの訳文でのセリフの雰囲気も美しくて好きだ……。短くスマートな文節が多くどこか書き言葉っぽい雰囲気もあるのが、彼のフランス語ネイティブじゃなさを丁度良く表現しているんだろうなと思う。
彼が冷静沈着で高い知能を持つ人物で淡々と話している、そんな様子が伝わってくる……。

それから何より彼がアロナックスのことを先生と呼ぶのがやばい。
知識面においてもノーチラス号という場所の利においても完全に主人公一行の上にいるのに、学者としての敬意をこめて「先生」と呼ぶこの物腰。
(どうやら訳によっては「教授」と呼ぶっぽい。どちらにも良さがあるな……)
マウントをとったりせず相手の分野を尊重して、時にアロナックスの意見を伺う姿勢が理性的でとても素晴らしい。
そして意見を聞いた後に自分の知識をガツガツ話してくるのも最高。
物腰が柔らかだけどヤバさを秘めてる学者キャラって大好きなので、ネモに落ちないはずがなかったのだな……。

10章最後の、喋りすぎた反動ですっと黙り込むネモ、良い。
(そして最後まで読んでからここを見ると、これは彼の中で一瞬だけ理性の皮が緩みかけた瞬間だったのだなと思う……)

■11~13章
ノーチラス号の船内や仕組みの解説、めちゃめちゃ良い~~!!
これまでSFは殆ど読んだことがなかったんだけど、ファンタジー作品でもある生物種の生態とか世界の仕組みとか建物の構造とか、そういう「ここではそういうことになっています」という要素について詳細に説明されるのが大好きだから、そういう部分を高密度で浴びれるの最高だ。
文体が好きなのもあって、こういうの無限に読んでたいなと思う。
多少のツッコミどころはあれど、完全な正確さを求めて読んでるわけじゃないので読み流せる。むしろこれが当時の知見から導き出した最先端のロマンか……! というドキドキが余裕で上回る。

たびたび挟まるアロナックスの海洋生物の記録も、キャラ視点で海の中を覗いているようでわくわくする!
もっと魚類の解像度が高かったら面白いんだろうか? でも馴染みのない種名表記も多そうだから逆に混乱するのかもしれないとも思う。

■22章
アロナックスたちが陸上探索から帰ってきて、大変だ! 原住民に敵意を向けられている! と伝えられたときのネモ、オルガン弾いてて一瞬聞こえてないのかわいすぎる。
というかオルガン弾けたんですね……ふうん……金持ちの文化人じゃん……(喜)。
原住民の話を聞いてもなお一切取り乱さないのも流石すぎ。すばらしい。

■24章
大怪我した船員をアロナックスが診るくだり。
ネモ船長がこんなにも不安がり取り乱すシーンは初めてで、この異質な空間で船長をしている謎めいた冷静な彼であっても一人の人間なんだ……と胸がギュとなる。
アロナックスが「まさかこの男が泣くとは信じていなかった」と語るのに対し、わかる……しか言えなくなる。
ネモ船長が決して冷血漢ではなく、仲間の死を前に泣く人間らしさをもった人なんだという衝撃。

その船員の埋葬の様子はまさしく彼が作り上げた海の文化であるし、ネモがなおこの墓場を「人間の手の届かない場所である」として重要視しているのも思想の強さを感じさせる。
船員たちとネモの関係も未だに謎か多い……ここから明かされるのかどうか、それすら分からない。

――ここまで第1部――
――ここから第2部――
■5章
ジュゴンの描写が実際のジュゴンと違いすぎて面白い。
当時は生きているジュゴンを見る機会もそうそうなかっただろうから、絵に描かれた記録や骨格からの生態の推測とかで書いた結果なのかなあと思っている。
「マナティーと違って鋭い牙が2本ある」「鰭には指がある」という記述も、ジュゴンの骨格だけ見れば納得できなくもないので。

■12章
クジラの描写だ!!!! めちゃめちゃテンション上がる。
自分は鯨類大好きだし捕鯨史も大好きなのでこの章は大変興味深い。
特に当時のクジラに対する視点と、捕鯨という行為に対する「人間が巨大な生物を圧倒する、ワイルドな海の戦い」という印象の強さを感じることができてたいへん良い。

そして何よりクジラの種類に対する偏見がすごい。
ネモがヒゲクジラに対して
「無害で善良な、北方クジラや南方クジラを殺したりして、ランド親方、きみたちの仲間は、恥ずべき行為を犯している」(p.449)
と庇護する立場に立った直後に、同じ口でマッコウクジラに対して
「やつらは残酷な、有害な動物だから、みな殺しにしてやってもいいんです」(p.450)
とさらりと言うところ。
当時らしさ全開のド偏見で声出して笑った。

21世紀の今だからこそ、こんなんダブスタじゃん! マッコウ差別だ!(?) という気持ちになるが、1870年頃当時のクジラ観としてはそれほど違和感はなかったんだろうなと思う。
というのも
・当時マッコウクジラがアメリカ式捕鯨のいちばんの獲物であったこと
・単純に巨大なハクジラの見た目がヒゲクジラより凶暴に見えたであろうこと
・マッコウクジラは特に頭部の傷あとが目立つこと(→残酷で争いを好むという偏見が生じやすかった)
と考察できるから。

また、かつてジョーズ(原作1974・映画1975)がサメの悪印象を強めたように、メルヴィルの白鯨(1851)もまたマッコウクジラの悪印象を強めたのではなかろうか、とも思える。
それが良いか悪いかは一旦置いておいて、当時の価値観はこんな感じだったんだろうなあ……とどこか客観的に見れるのが、過去の作品から動物観を感じとることの面白いところだ。

あとこの章で、明確にネモからネッドへの口調がアロナックスへのそれと違うのが分かって驚いた。
アロナックスに対しては敬語だけど、ネッドに対しては少し荒っぽく上から目線というか。
ネモがアロナックスに大して敬語だったのって彼が学者であり教養を持つ者だったからなんだなって……。
まあ当時の価値観とネモの立ち位置を考えるとそれほど不自然でもないので別に嫌な驚きではないんだけど、ここまでの描写で、ネモは立場が下の人間に寄り添う人間なのかなと思っていたので単純に意外だった。
彼はあくまで圧政される側への寄り添いがあるのであって、決して無条件に弱者や肉体労働者を労る"善の人"ではないんだなあ。
あくまで船長たる自身のほうが立場が上で、銛打ちのネッドはその下である、というのを当然とする雰囲気が19世紀っぽいというか。

権威を嫌っているんだかそうじゃないんだか、平和主義なんだかそうじゃないんだか……ネモの人間臭さと複雑さがどんどん見えてくるすごい章。

■20~21章
20章の「北緯四七度二四分、西経一七度二八分」という異質な章タイトル。
そのヴァンジュール号のお参りからの不穏な流れが、21章ですごい勢いで展開されて唖然。

アロナックスたちが見てしまった、ネモ船長が復讐に燃える姿。
前章からの流れとしてあまりにも不穏かつ妥当で、いくらか想像はついていたのだがその荒ぶりが想像以上の迫力でぞわっぞわする。
敵艦に対し、一人称がおれ、船への二人称が貴様という口調で荒々しく叫ぶネモ船長。
彼はこの鬼神のような復讐者の一面をもちながらこれまであんなに穏やかな表層を保っていたのか!? 彼の精神力は超人のそれじゃないか!!??

そんでもってネモ船長妻子持ちだったの!!!!?????!!?!?!!?
そうか……それも含めての復讐なんだ……。
彼のどこか狂気じみた復讐の熱は一瞬だけ白鯨のエイハブを思い起こさせたのだが、決定的に違うのはそこだ。エイハブは白鯨と一対一だったが、ネモは彼の妻子や家族や故郷を背に、もっと大きなものと戦っている。
なんなんだこの人……なんなんだこの人……!?

彼が海に居るのは、ただ陸上の権力だとか支配とかいうものに嫌気が差しただけじゃなくて、明確な復讐であり他に行き場のない感情の表出なんだ。
陸上にいた時は妻子がいて平和な家庭があったただの技師……ってこと……つら……。

特にしんどいところ
>「ここで沈没させるわけにはいかない! 貴様の残骸を、ヴァンジュール号のといっしょにさせてたまるものか!」(p.574)
ネモにとって復讐の名を冠するヴァンジュール艦は、彼が愛する海中に存在する一つの精神的指針であり、復讐心を支えるものなのだろうなということがよく分かる台詞。
きっと彼にとってあの沈没船は聖地のようなものなんだろうと思う。
だからあの船に会いに行く時、海中から探すといった手段をとらず、わざわざ"北緯47度24分、西経17度28分"を探し当ててから真下へ沈んで会いに行ったんだろう。
章タイトルになっているように、彼にとってヴァンジュール号の座標はただの座標以上の意味があるんだ。

>(沈む船を海中から見ながら)彼は押し黙って、憎しみを込めた暗い顔つきで、左舷の窓ごしに眺めていた(p.579)
彼にとっての復讐が決して清々しいものではなく、憎しみと嫌悪に囚われた末の行動だということが分かる。
きっかけとなる悲劇がなければ、彼はきっと今でも陸地で暮らしていたはずなのだから……。
あの艦の国をずっと許せずに、ただ破壊の手段をとるしかできなかった悲しき人物だ。

■23章(読了)
読み終えた~!! すっっっごい好きな話だった!!!! 読んで良かったなあ。

アロナックスたちが無事に陸地に戻ることができて心から胸をなでおろした。
特に終盤で船内の環境に完全にまいっていたネッドランドが陸に戻れて、本当によかったね……の気持ち。
そしてノーチラス号の安否については明言されなかったけど、きっとネモならあのメールストロムの渦潮を乗り越えただろうと思う! だって南極の氷だって抜け出せたんだから!
ノーチラス号の安否が謎の状態で終わったのはたいへん好みだった。

そしてアロナックスの物語の締め方もとても良かった。
ネモが、彼が愛する海洋で生き延びていますように、海の探究を続けていますように、そしていつか復讐心から解き放たれてくれますようにという願いに共感しかない。
(復讐からの解放という願いは、きっと彼本人が最も望んでいないことか、本人が最も望んでいることのどちらかなのだろうけど……)

そしてアロナックスの「彼の運命は奇怪とはいえ、それはまた崇高である」という一文は、ネモを表すのに最もふさわしいと思う。
ネモが持つ
理性的な学者・技術者の面も、
怒り猛る復讐者の面も、
船長としての頼もしい静かな面も、
アロナックスの友人としての面も、
そして人間を愛し憎む一人の人間としての面も、
どれも捨てがたい、彼を構成する一要素だ。
すごいキャラクターだ。好きだ……。

冒険物語としても、アロナックス視点で見るネモの物語としても、素晴らしい話だった。

あと、この作品を今読んで良かったと思う!!
自分の中でとっ散らかった色んな知識が結びついて楽しく読めた、というところが少なからずあるので、人生の中でこの本を手を取るタイミングとしては最高だったかもしれない。
他の人がどういうところに着目して読むのかもたいへん気になる。
が、感想やレビューを探すのは「神秘の島」を読んでからにしようと思う。それでも彼には謎が残りそうな気がしているけどもね……。

名作だからキャラ萌えしている人が少ないのは仕方ないとしても、こんな有名作品でなんでこれまで誰もネモ船長という人物がこんな激重で複雑な人間性の復讐に燃えながらも知性と理性で制御してるメロすぎる男性(船長&技師&科学者&妻子持ち)だって教えてくれなかったの!!??!? という気持ち、ちょっとある。
150年経っても新鮮にかっこいい……。
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以下は考えたこととか考察とか。
※神秘の島を読み終えるまでネタバレを避けているので、既出かどうかや整合性とれてるかはまだちゃんと調べていない。
彼が「ネモ船長」を名乗ることについて
Captain Nemo = 何者でもない船長 という意味なわけだけど、
「故郷と家族を奪った相手を許さない」と復讐心に駆られた彼が名乗るようになったのがこの名前なのがしんどい。

自身のかつての名前を手放し、
故郷があった陸地を手放し、
人間社会における規範や立ち位置をすべて手放し、
ノーチラス号という自分の築いたルールの中で暮らすにあたって、人間性を保つものである彼の個の名前はもはや必要がなくなってしまったんだ。

陸で生きていた時は確かに一人の人間だったのに、今や大洋を自らの庭とし、その一方で復讐を果たそうとする"何物でもない"存在でしかない。
そんな中でかろうじて名乗るのならば船長という肩書だけである、という……。

それでいて複雑な人間性の檻に囚われているのもまたつらい。
人間の権威による支配を嫌っておきながら、その視点はどこまでいっても人間の権威でしかないという矛盾。
存在がNemoになっても肩書としてのCaptainを手放せないでいる。
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ネモの出身地について
ネモはヴァンジュール号訪問後に現れたあの船に対して
>「呪われた国の船め!(中略)国旗がなくったって、おれにはおまえがわかるぞ!」(p.573)
>(アロナックスに対して)「あの船の国籍があなたに知られないのは、せめてものなぐさめです」(p.574)
っていう風に、やたらと国籍を意識している。

ここで第1章で説明されている、ノーチラス号に衝突されて穴をあけられた船のことを思い出して読み返してみる。おいおいスコティア号ってイギリス船じゃないか。
もしかしてネモが敵視しているのってイギリスなのか……?

仮にそうだとしたら
・ネモは"復讐"に燃えている→イギリスの植民地下の出身である可能性が大きい
・作中が1868年である
という点から彼の出身地をある程度絞り込めそうで……。
彼が権力や支配を毛嫌いするのもなんだか分かってしまうんだよなあ。
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ノーチラス号以前について
ネモってノーチラス号の前にごく少人数用の小型潜水艦とか作ってそうだなと思った。

作中の序盤でノーチラス号について説明する時、これらの言及がある。
・そもそもネモはかつて技師をしていた
・ノーチラス号の部品は世界各地で製造を依頼した
・その資材を、ノーチラス号の製造基地となる無人島に運び入れた
・ノーチラス号は、ネモが教育した人々(現在の乗組員。おそらく権威に虐げられていた側の人々?)に組み立てさせた
・アロナックスの「あなたは金持ちですね?」という問いに「億万長者ですよ」と答えている。

そして2部8章で「海底に沈んだ金銀財宝を回収しているから自分は金持ちなのだ」と説明するくだりがある。

つまり
・製造基地の無人島に、複数人で出入りできる手段をもっていた
・ノーチラス号の製造前段階において海中の金銀財宝を既にいくらか集めていた?
ということ。
(後者に関しては元から金持ちだった可能性も捨てきれないが……)

それを考えると、彼は資材や少人数の人々を運べるくらいの小型潜水艦を持っていたのではないかと思う。

冷静に考えてみれば
・電気システムの検証や耐水圧の試験
・集めた仲間に、潜水艦制作の技術を教えるための試作
(👆この技術は修理の時にも必要になるだろうから絶対に学ばせる必要がある)
などの必要性的にも、ノーチラス号以外の潜水艦が存在しないわけがないだろうなと。

それにネモ自身が操縦を練習したり、仲間に潜水艦の操縦を学ばせるための機体も必要だったと思う。
それならば、ノーチラス号の運転は基本的に船員が行い、重要なところではネモが操舵席に立つ……というノーチラス号の運用にも納得がいくし、普段からネモが指示した航路を正確に・的確に走れることもしっくりくる。
きっとネモは教えるのもうまいんだろうな……。

それらを考えると、
最初期の潜水艦はネモが一人乗れるくらいで、耐水圧とか電気の利用とか発電の技術的実現性を探る
→それらの改良の中で巨大な金属パーツを少しづつ運べる規模になる
→無人島に資材を順次運び入れていき、仲間も集める
→教育と性能の試験を兼ねて試作品を作らせる
→いよいよノーチラス号の着手
くらいの工程が要りそうだよなーと思う。

まあ全部妄想なんですが……。
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作品感想,本・漫画

#海底二万里 読み終えた!!
19世紀の海洋冒険譚としても、SFとしても、ノーチラス号の物語としても、とても良かった~~!!
読みながらずっとわくわくしていたし、読後感もたいへん良い。
作中たびたび挟まる生きものの解説も、アロナックスと一緒に海洋を旅しているようで楽しかった。
分からない地名を逐一調べながら読んでいたのと、内容が面白すぎて一文一文じっくり読んでいたので、1カ月半くらいかかっている。
こんなにテンションぶち上がった小説との出会い久しぶりだ~。

個人的にどうしても避けられない感想としてネモ船長のヤバさがある。完全にもっていかれた。名前の知名度に反してあまりよく知らなかったんだけど、とんでもないキャラだ。色んな要素があまりにも好きだ。そしてしんどい。完全にオタクの語彙になってしまう。
こんなに有名な作品なのに、何でこんな過去激重で複雑な、異様なまでの理性と狂気を同時に携えた男のことを誰も教えてくれなかったんですか!!??
答えはオタクが感情移入しすぎているからです。はい……(着席)
複雑な人間性を秘めた名もなき船長……白鯨のエイハブと似ているようで決定的に違うのもぶっ刺さりポイントだった。

個人的に読みながらネモ船長に情緒やられたポイントや、時代背景や生物学史的に「おっ」となったポイントは色々メモしてたので、後でここに上げておきたい。
既に長くなりそうな予感しかしてない。
ちなみに読んだのはこの版でした。
集英社文庫 ジュール・ヴェルヌ・コレクション 海底二万里(改訂新版)
どうやら同じ版でも、謎の水色おじさんの表紙と、黒背景にノーチラス号が描かれてるのの2パターンがあるっぽい。

翻訳はほどよく硬くて、決して読みづらくはないが古めの翻訳感が楽しめる。
個人的にちょうど好きな塩梅の文体でとても嬉しい。
目次部分に地図はあるけど、挿絵はない。

次は神秘の島を読みたいんだけど、そちらはあまり翻訳の種類が多くなさそうなので偕成社文庫あたりかなあ。
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作品感想,映画

1956年の『白鯨』がYouTubeにあったので観た。
白鯨 (Moby Dick (1956)) YouTube

数年前に白鯨原作を読んだ後にあわせて観たことがあるので2回目。
久しぶりに見返したくなっていたところ、まさかのYouTubeで公開されていた。
二度目とはいえ細部の描写をちらほら忘れているので、新鮮に楽しめた。
白鯨の映像作品としての「原作のシーン省かれすぎだろ!」とか「サメ映画の原型かい!」みたいなところの感想はまあ二回目なので特になく……こうして書いたからいいか。
ただ、この映画を見返している最中に、原作の記憶にも忘れている箇所が多いように感じたので、原作のほうも近々読みなおしたいところではある。

・白鯨伝説のババはもしかしてこの作品のクィークェグを参考にしたんじゃないだろうか。そう思うくらい、話し方も顔つきも似ている。
・イライジャってこんなに雰囲気あるキャラだったか……まるで記憶になかった。
・船乗りの歌の文化を描写しているの良い。
・クィークェグが棺をつくらせた後のピップをはじめとする黒人たちのくだり、今見てもよく分からないな。
こういう表現しているからには何かしら歴史的背景があるんだろうけど。

・前に観た時も思ったけど、捕鯨シーンってどうやって撮ってたんだろう。
→調べてみたら白鯨は模型、それ以外は模型かどうか分からないけど、一部は実際の捕鯨らしい。
映画自体は国際捕鯨問題が浮上してきた時期の作品なわけだけど、良いんだ……。

・改めて見ると、エイハブとスターバックの対比が良い。
頼もしい船長でありながら復讐に狂って合理性を見失いがちなエイハブと、信心深いリアリストのスターバック。
エイハブの「この風を天の恵みと思え」に対し
スターバックが「これは神の怒りだ」と返す会話が特に好きだった。
エイハブの船長としての面、こういうのをカリスマっていうんだろうなって思う……どれだけヤバいこと言ってても、立場と振る舞いで皆を着いてこさせる人。
スターバックが最終的にエイハブに魅了される……もとい狂わされるのも、かなり良いよな。

・白鯨の派生作品には色々あるし、いろんなエイハブがいるけど、個人的に見た中ではこのグレゴリー・ペックのエイハブがトップクラスに好き。
力強い眼力と深くしかめた面、ワイルドな顔つき、底知れない復讐心を秘めた鯨捕りであり、皆が白鯨をおそれながらもついて行く謎の船長。その感じが遺憾なく反映されていてかっこいい……。
とはいえもう少し「孤独で謎めいた闇のある船長」みがあっても良いとも思うけど、これはどちらかというと脚本側の話のような気がする。

・終盤のエイハブとスターバックの静かな会話のシーン全部良いな。
(突然別作品の話を出すけれど)海底二万里のネモにしてもエイハブにしても、ひとつの思想だけを見据え続けた皆のリーダーたる人がふと見せる人間みのある弱さや迷いのシーンって良い。
・一人の人間の鯨捕りとしての人生を狂わせたモービーディックだけど、彼にとっては単なる人間の一人でしかなさそうだというのもいいよね。
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作品感想,映画

『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』観てきた。
前作も良かったし、今作もめちゃめちゃ最高だった。ありがとうございます。
小黒かわいいしルーイエかっこいいし無限様はつよい。
師弟関係大好きなのでずっと噛み締めていた。前作の続きにあたる小黒と無限の関係性を見れるうえに、兄弟弟子……ありがとうございます……。
しゃおへいの成長を見守る無限、兄弟弟子の出会い、ルーイエのかつての師匠と無限との出会い。
師弟関係って「変化」が常にある関係性なのが好きだ。弟子はずっと師匠を見上げるだけではいられないし、師匠もずっと守るだけではいられない。出会いもあるが別れもある。自分が師から学んだことを引き継ぐ番になることもある(ルーイエが弟子をもっているのびっくりした)。
ルーイエと小黒の関係性の変化の描写が丁寧で、とても良かった……。

前作でも同じような感想を抱いたんだけど、羅小黒戦記は物語の締めに「このまま立ち止まってはいられない。前を向いて進まなければならないんだ」という切ない前向きさを感じる。
平和を乱すものがいる以上、力をもつ者としてそれを止めなければならない。ずっとそういう話をしている。
そして、ルーイエの「戦争は終わるまでどっちが正しいかわからない」という発言もまた本質的だなと思う。
この作品で戦争を起こそうとする人間の行動は愚かで・話が通じない・敵意に満ちた存在のよう描かれるけど、一般人や敵意のない人間は決してそうではない。妖精も人間も一枚岩じゃないから、互いに盲目になってはいけないんだというメッセージを(勝手に)感じる。


アニメーション表現もやっぱり好きだな~と思った!!
なめらかに滑るようなアクションや日常の動きが本当に見ていて綺麗でうっとりする。小黒の一挙手一投足、特に食事シーンやはしゃぐシーンが生き生きしていてかわいいし、全然動かない無限のふとした動作も好き。
特に印象に残ったのは、回想で仲間を亡くしたルーイエが無限に向かって暴れる場面。ルーイエの動と無限の静の対比がこれでもかというくらい極端で、ルーイエの感情の行き場のなさがひしひしと伝わるようだった。
前回より3Dが多く使われていたけど、元の作画がぬるぬる動く感じなので全然違和感がなかったのもすごい!
飛行機のくだりとかずっと息を止めて見てしまった。機内の重力変化の描写、本当に臨場感があってすごい。
あとルーイエが痕跡を追うシーンで挟まる短いカットが連続するところ、画面が動かないぶん構図に全振りしてて最高……!! 全部のカットが絵になる。あそこをまとめた画集あれば買うレベル。

コミカルなシーンも相変わらずよくて、無限を好き放題ボコる小黒とそれをウケながら撮るルーイエのとこめちゃめちゃ好きだった(字面だけ見たらなんだこれ)。
あと全編通して無限様は相変わらず強くて静かでかっこいいんだけど、終盤強すぎてウケちゃったシーンがある。なんでこのひと人間やってるんだ。

今作からのキャラとして気になってたのはシームーズさんで、糸目のCV.石田彰キャラということで、一周回って黒幕はないよなと思ってそわそわしてた。
正直このタイプのキャラかなり好きだからもっとみたかったな……どこかで見れませんか……。扇子を扱う所作がいっぱい見たい。
彼がどんな面白を好むのか気になるよ~。
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