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No.670

文字,日記

散文。6月頃に書きかけていたものに加筆した。
 ドクダミの花が満開だ。
 春、次から次へと彩られていく植木や花壇の裏で、ひそやかに、しかし華やかに、真っ白な舞台が用意されている。
 ドクダミというと繁殖力が高いだとか強い臭いがあるだとかいう印象が強いけれど(そしてそれはやはり、決して悪いことではないのだけれど)ほんとうは花としてもたいへん美しいのだ。
 ハートの葉の重なりを掻き分けて、少し外を覗いてみようか、というように顔を出す姿は、小さくて可憐な印象もあってあどけない少女のようである。それがたくさん咲いている場所なんかは――もしそれが放っておかれた物置の隅なんかだったとしても、花畑といって差し支えない景色だ。
 夜の暗い空にぱらぱら光るのが星ならば、ドクダミの花は初夏の緑に光る足元の星であろう。
 白い総包片を四つ丸く伸ばす姿は凛として、日向のずっと高いところに咲いているよく似たヤマボウシにも堂々として並び立つ。
 彼女たちの美しさは、初夏の光をひっそりと避けてなおかがやいている。

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